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対人恐怖のあなたへ

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練馬集談会 しゃぼん   

 私は、不安を持ちやすく感じやすい素質を持って生まれました。自分を客観的 に見られるようになった高校生の時、そこにいた自分は、人に対する強い恐れを持ち、人の思惑が異常に気になり、人に対してすぐ緊張してしまう人間でした。そのくせ、自分は特別な立派な人間であるという変な思い込みがありました。このような人間が、常に人と接する社会で生きていくことは、とても苦しいことでした。対人恐怖症の方は、多分、私と同じような感覚があると思いますので、対人恐怖に苦しみながら、よくここまで生きてこられたと、その頑張りに敬意を表したいと思います。
  
出発点は、知ること  
 森田療法は、対人恐怖の私にとって大きな救いでした。では、森田療法によって、どうしたら対人恐怖が良くなるのでしょうか。まず、出発点は、知ること、知識を得ることです。自分がわけのわからない奇病に憑りつかれていたように思っていたものが、自分は対人恐怖症で あり、多くの同じ悩みを持つ人がいることを知っただけでも、ずいぶん、気持ちが楽になると思います。そして、森田療法は、あなたが対人恐怖になったメカニズムを教えてくれます。生まれ持った素質に加えて、例えば、人の思惑にとらわれること、また、人前で恥をかいたなどのきっかけによって対人恐怖が発症します。発症のメカニズムを知ることは、良くなるにはどうしたら良いかを知ることにもなります。

 次に人間とはどういうものかを知ることが大切です。対人恐怖で苦しむ原因の大きなものに、人間についての無知があります。例えば、人に対する恐れを持っている対人恐怖の人は、何とか人に対する恐れを無くそうとします。そして、そのために努力をしますが、恐れを無くすことができずに、ますます恐れの感情を 強めることになります。恐れも含めたすべての感情を自分の意志でコントロールできないのが人間です。その人間の事実を知らずに、感情を変えようとすれば、一生を無駄な努力に費やすことにもなりかねません。恐れは、嫌な感情ですが、それは、変えるものではなく、ただ感じているだけでいいのです。
    
日常生活の中で体験していく
  症状について、自分について、人間について、正しい知識を得たら、それを日常生活の中で、自分のものにしていく努力が必要です。知識だけでは、何も変わりません。日常生活で、いろいろな体験をし、いろいろな感情を味わっていくなかで、自分の症状についての考え方、人間についての考え方の間違いを自覚し、常に自分の考え方を正していかなければいけないと思います。そのためには仲間が必要ですので、生活の発見会は大きな力になると思います。
  
実行するのは、あなた自身
 症状が、どのように良くなるかは、人によってちがいます。行動するなかで、人に対する恐れが無くなって、活き活き活動的になる人もいるでしょう。人に対する恐れは持ったままでも、そのような自分を受け入れ、自分のできる範囲で行動することで、生き甲斐を感じられる人もいるでしょう。なかなか行動的になれなくても、『自分は、ただこれだけのものである』という思いになれる人もいると思います。

 人によって、道はちがいますし、到達点もちがいます。それを試行錯誤しながら、選択し、実行するのは、あなた自身です。誰かが治してくれるものではないことを、しっかり自覚することも大切だと思います。


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