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心の自然治癒力

練馬集談会 A.Inagaki   

photo  私は20代の頃から40代まで、抑うつ症状にずっと苦しんで来ました。
・朝起きると、漠然とした不安に襲われる。
・やる気が起こらず、人と比べて無気力な自分を責め、ますます気分が内向していく。
・過去の失敗への後悔で、何であんなことをしてしまったのか、同じことをぐるぐる考えてしまう。
・休日になると空虚感に苛まれ、時には大声で叫んだり壁をこぶしで叩いたりしてしまう。

20代の頃はキリスト教会に通いましたが、結局、弱い自分を受け入れられませんでした。
30代の頃は禅寺で参禅し、坐禅を組んでいるときは落ち着くのですが、実生活で抑うつが起きるときはどうしようもありませんでした。
40代に生活の発見会に辿り着き、やっと抑うつ症状から解放され、今は心底ほっとしています。
  
心の葛藤の原因は…  
 森田療法では心の葛藤の原因を、「あるべき理想の自分」という観念にとらわれて「現実の自分」を認められないことによるもの、ととらえています。
  私も、森田の学びの中で自分というものを客観的にとらえていく中で、自分が、「何か世の中の役に立つことをしなければならない」とか「自分の夢に向かって生きなければならない」とかの理想=観念に捉われていたのだ、だからそうでない自分と比べてしまい、自分を責めたり不安や虚しさを感じていたんだ、ということに気が付きました。

「そのまま感じる」ことの大切さ
  また、森田療法で特に強調するのは、「あるがまま」ということです。それは「心には、体と同じく自然治癒力というものがあって、それに任せていれば自然にバランスが整えられていく。だから、心=感情を抑えたりせず、そのまま感じていれば自然に健全な方向に向かっていく」ということでもあります。
  毎月の集談会やいろいろな学習会で、私は、「日常生活の中で不安や恐れが湧いてきても、それを否定したり抵抗したりせず、そのまま感じる」ということの大切さを繰り返し繰り返し教えられ、先輩たちに助けられながら、自分でもそのような心の態度を養ってきました。
  
抑うつからの開放
 このような学びの中で、「こうでなければならない」という観念的な理想が自然に取れていき(これも心の自然治癒力によるものです)、また、不安や恐れの感情にも抵抗しなくなっていって、その結果、抑うつにとらわれることがなくなっていきました。
  もちろん、日々の生活の中で、時には不安もありますし、空しさを感じるときもあります。でもそれは、そのときだけのことです。逆に、陽の光や風の音など、何気ない小さなことに楽しみを感じることも多くなりました。
  何より自分をだめだと思うことがなくなりました。「こんな自分だけど、まあいいか」という感じです。
  「理想がなくなったらもっと怠け者になるのではないか」と心配していましたが、結果は逆でした。これまでのように意志の力で頑張るのではなく、自分の中から自然な欲求が湧いてきて、自然に努力している自分がいるのです。


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