原著森田とは

感じとる原著森田学習会 吉澤 隆 

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「原著森田」とは、森田理論の創始者である森田正馬自らが著した文献、あるいは語ったことをまとめた文献、及びそれらを再編集した文献を指しています。主なものとして、ここでは以下をあげておきます。

①  『森田正馬全集・第五巻』
②  『神経質の本態と療法』(森田正馬 著)
③  『神経質問答』(森田正馬 著 水谷啓二 編)
④  『神経衰弱と強迫観念の根治法』(森田正馬 著)
⑤  『現代に生きる森田正馬のことば』(生活の発見会 編)


これらの各文献について簡単に内容・構成などを紹介します。
 
  
①『森田正馬全集』第五巻  
 これは森田先生を中心に開催されていた「形外会」という対話の会の記録です。「形外会」 は昭和四年十二月から昭和十二年四月までの期間で、第一回から第六十六回まで開かれています。この会は当初、森田先生に治療を受けた人が、アフターケアの目的で参加するというものでしたが、第十八回からは『神経質』誌の読者なども参加するようになったようです。この中には、後年に森田理論の継承者となる医師や、一般者の会の創始メンバーなども含まれています。
 この形外会の性格としては、治癒した会員が森田先生に対して謝恩を表し、またさらに指導を受けたいとの思いから先生をお招きして開催し、会員が集まる、というものでした。
 森田先生はこの会について「皆様の好きな通りにすればよい。(中略)私は皆様が、なるたけ面白い中に効能のあるように、この会をしていきたいと思うのであります。」と言っています。実際、この会では座談だけでなく、ハイキング・旅行、講演会などもやっています。
 実際の会の様子は、参加した会員が自らの体験を自由に語り、抱えている問題なども出し合いながら、これに対して森田先生がコメントをし、時に指導をするといったものでした。そこには人生問題、日常生活での問題などさまざまな話題が飛び交い、森田先生自身「病気のことに拘泥せず、人生と神経質という題目で話すとよい」と言っています。
 なお、ここに掲載された記事は、会員が速記したものの中から、森田先生が取捨選択をし、さらに神経質の症状や療法に関することがらはむしろあまり立ち入らずに省略し、会員の気を引くような珍しい内容のものや、神経質の人にかぎらず広く一般の人の修養の助けになるようなものを選び、必要に応じて加筆した、としています。
  『森田正馬全集・第五巻』の巻末の「解説」において、この文献の編集委員の一人である青木薫久氏は「その後の森田療法の発展と、晩年の森田先生の森田療法・神経症理論に関する最も円熟した思想を知るには、『神経質』誌の論文、ことに、この形外会の記事という膨大な文書が最適のものではないかと思われるのである。しかも、この文書が、森田先生の神経質者との集談会における対話の記録であるために、文章が平易で、読みやすく、このため、専門家のみならず、神経質者や一般の人達にとっても親しみやすいものとなっており、他の著作からはうかがい知ることのできない森田先生の人格・風格を知ることができるのである。」と述べています。
 以上のことからもわかるように、この文献は原著森田の内容に触れて、生涯学習の一つとして学ぶには、最適のものということができます。ただ、量的に膨大なので、時間をかけて読んでいくことになろうかと思います。また、数人のグループで輪読するというのもいいでしょう。

②『神経質の本態と療法』  
 この文献は、神経質の原理を述べたものであると一般には説明されています。そして、神経質に関する森田先生の最終的な到達点を示していて、森田療法の神髄が表されていると言われています。ただし、これは森田先生自身が言っているように、学術論文としてではなく、一般の読者にも理解されるように、平易に説明しています。
 本書の中の、神経質の原理を解説した部分では、神経質者の意識の特徴にふれ、神経質の克服のみならず、その後を生きていく上での意識の持ち方の注意点といったところにまで言及しているように思われます。

③『神経質問答』  
 形外会での座談のうち、参加者と森田先生のやりとりの部分を抽出し、章立てをして一冊にまとめたものです。各章は、神経質の特徴、克服方法、人間の内面性への理解、そして神経質傾向をもったままでの生き方の提案といった内容となっています。
 『森田正馬全集・第五巻』よりも分量が少なく、また問答形式となっているので、原著森田の内容を比較的コンパクトに学ぶことができます。

④『神経衰弱と強迫観念の根治法』  
 森田先生はこの本の「はしがき」のところで、「本病の悩みに関係ないと思っている普通の人でも、もしこの書を読めば、一口にいえば人生の煩悶とか称するものが、この神経衰弱や強迫観念と同じ心理に基づくものであるということが、類推によって想像される。それはおよそ病の徴候というものは、常態における感じや気分の拡大されたものであるからである。したがってこの病的心理によって一般の精神修養の着眼点を得ることができ、心身の強健ということは、今日の物質医学が示すような、人間を鋳型に容れたり、あるいは温室培養的なことでできることではない、ということが解る。」と書いています。
 「精神修養」といったあたりから、同じく生涯学習としての学習効果を期待できるように思います。

⑤『現代に生きる森田正馬のことば』  
『森田正馬全集』全七巻のうち、主として第五巻からの抜粋で構成され、さらに一 部は第四巻(外来指導・日記指導)及び第七巻(神経質者のための人生教訓)からも採っています。採択した題材に対する解説や解釈は基本的にしていませんが、最大の特徴としてテーマ別に章立てがなされています。これにより、森田先生が示したかったいくつかのポイントを漏らすことなく、かつ整理した形で学ぶことができます。また、一つのテーマに複数の抜粋例が載せられていて、それぞれに微妙に述べられていることに違いがあります。このあたりのことを見ていくことも、理解を深める上で役に立ちます。
 全二巻の構成となっていて、若干ボリュームがありますが、網羅的にそして簡便に原著森田の内容を学ぶには格好の文献といえます。
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Ⅰ原著森田とは / Ⅱ原著森田に見る「治る」とは 1  /  2

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